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透析は,診療報酬上では特掲診療料のうち「一般処置」に分類されています。透析は,診療報酬においては「人工腎臓」と標記されていますが,ここには,血液透析のほか血液濾過及び血液透析濾過が含まれています(区分番号:J038)。なお,腹膜透析は「腹膜灌流」(区分番号:J042)という名称となっています。この他,通常の人工透析療法が困難な腎不全患者さんに対して長時間かけてゆっくりと体液調整を行う「持続緩徐式血液濾過療法」は,慢性維持透析とは別区分扱いとなっています(区分番号:J038-2)。
[概要]
| 種類 |
透析を行った時間 |
点数 |
評価 |
慢性維持透析 |
4時間未満 |
2075点 |
包括 |
4時間以上5時間未満 |
2235点 |
包括 |
5時間以上 |
2370点 |
包括 |
その他の場合 |
- |
1580点 |
出来高 |
[詳細]
・慢性維持透析
血液透析のうち,慢性維持透析を行った場合における診療報酬は,入院・外来の区別なく,透析を行った時間(*1)によって点数が異なり,4時間未満の場合は1日につき2075点,4~5時間未満の場合は1日につき2235点,5時間以上の場合は1日につき2370点となっています(「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)」(平成22年厚生労働省告示第69号) 第2章-第9部 処置 J038 (p.5)参照)。
慢性維持透析は,病状が安定している患者を対象としていることや,入院・外来いずれにおいても同等の医療が提供されているであろうことを踏まえ,包括評価とされています(平成22年度改正前は入院は出来高評価。)。したがって,上記所定点数には透析液などの費用が含まれることになるため(平成22年厚生労働省告示第69号) 第2章-第9部 処置 J038 注6参照),例外的な場合(*2)を除いては,使用した薬剤等を薬剤料や特定保健医療材料料として別途算定することはできません(人工腎臓の所定点数に含まれるものの取扱いについては,「診療報酬の算定方法の一部改正の伴う実施上の留意事項について(通知)」(平成22年3月5日 保医発0305第1号)別添1(医科点数表)第9部 処置 J038 (17)) (p.246~247) 参照)。
*1(透析を行った時間)
透析を行った時間(人工腎臓の時間)には,透析実施前後の準備・整理に要する時間は含まれません。これは,人工腎臓の時間とは,「シャント等から動脈血等を透析器に導き入れたとき」から「血液が透析器から患者に全て戻ったとき」まで,とされているためです。
*2(例外的な場合)
透析(人工腎臓又は持続緩徐式血液濾過)を一ヶ月に15回以上実施した場合には,15回目以降は点数を算定することはできませんが,15回目以降の透析に要した薬剤料又は特定保健医療材料料については算定することができます。
(*1:平成22年3月5日 保医発0305第1号)別添1(医科点数表)第9部 処置 J038(4)参照)
(*2:平成22年3月5日 保医発0305第1号)別添1(医科点数表)第9部 処置 J038(6)参照)
・その他の場合
血液透析のうち,慢性維持透析以外の場合(=その他の場合)における診療報酬は1580点となっています。その他の場合というのは,急性腎不全患者に対して透析を行った場合や,透析導入期(一ヶ月)の患者に対して透析を行った場合などを指します。その他の場合においては,慢性維持透析の場合と異なり,透析液・血液凝固阻止剤・生理食塩水・注射薬の費用は所定点数に含まれないため,これらを薬材料又は特定保健医療材料料として算定することができます(いわゆる出来高制)。
血液濾過については,①血液透析では対処できない透析アミロイド症などの患者を対象とし,②血液透析を行った上で,③血液濾過を実施した場合に限って算定することができます。この場合,血液濾過は慢性維持透析ではありませんから,「その他の場合」によって算定することとなります。
血液透析濾過(HDF)については,血液透析によって対処できない透析アミロイド症などの患者を対象として実施した場合に限って算定することができます。この場合も,血液透析濾過は慢性維持透析ではありませんから,「その他の場合」によって算定することとなります。
・加算項目
人工腎臓においては,夜間人工腎臓加算,導入期加算,障害者等加算,透析液水質確保加算の4つの加算項目があります。
(a) 夜間人工腎臓加算
入院中以外の患者に対する人工腎臓のうち,以下のいずれかに当てはまる場合には,所定点数に300点が加算されます。(ただし,①又は②の場合には1回に限り加算可能)
- 午後5時以降に開始した場合
- 午後9時以降に終了した場合
- 休日に行った場合
(b) 導入期加算
人工腎臓導入期には,1ヶ月に限り1日につき300点が加算されます。ここでいう導入期というのは,継続して血液透析を行う必要があると判断された場合の血液透析の開始日から1ヶ月間のことをいいます。
(c) 障害者等加算
著しく人工腎臓が困難な障害者等に対して行った場合には,1日につき120点が加算されます。(「著しく人工腎臓が困難」の詳細については,平成22年3月5日 保医発0305第1号)別添1(医科点数表)第9部 処置 J038(16)を参照)
(d) 透析液水質確保加算
透析液水質確保加算は,以下①~③の施設基準を全て満たしている場合に10点が加算されます。これは,より厳しい水質基準を満たしている透析液を使用している医療機関を評価することにより合併症を予防しようというもので,平成22年度診療報酬改正で新設された加算項目です。
- 日本透析医学会学術委員会による「透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準」に基づき,水質管理が適切に実施されていること
- 透析機器安全管理委員会を設置し,その責任者として専任の医師又は臨床工学技士を1名以上配置していること
- ①②が満たされていることを地方厚生局長等に届け出,これが受理されていること
・備考
- 人工腎臓の診療報酬は1日につき算定することとされていますので,治療が日付をまたいだ場合にどのように扱うべきなのかが問題となることがあります。この場合,以下のように対応することとなります。
- 人工腎臓を午後6時以降に開始し,午前0時以降に終了したときには1日として算定します。ただし,午後6時以降に「その他の場合」に該当する人工腎臓を開始し,12時間以上継続して行われた場合には,2日として算定されることになります。
- 透析の診療報酬は1日につき算定することとされているので,同じ日に診療報酬上で異なる区分の透析を実施した場合にどのように扱うべきか問題となることがあります。この場合,人工腎臓と持続緩徐式血液濾過又は腹膜灌流を同一の日に実施した場合には,主たるものの所定点数のみで算定することとなります。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理料を算定している患者に対して人工腎臓を行った場合には,週1回を限度として算定できます。たとえば,在宅自己腹膜灌流指導管理料を算定している患者に対して週2回の人工腎臓を行った場合には,1回の診療報酬しか算定できませんが,薬剤費は別途算定できることになります。
[原則]
持続緩徐式血液濾過の診療報酬は,1日につき1990点であり,腎不全,重症急性膵炎,劇症肝炎,術後肝不全の患者に対して算定することができます。
[例外]
ただ,重症急性膵炎の患者に対して持続緩徐式血液濾過を行った場合には一連につき概ね8回,劇症肝炎又は術後肝不全の患者に対して持続緩徐式血液濾過を行った場合には一連につき月10回を限度として3月間に限って算定することができます。
なお,持続緩徐式血液濾過と人工腎臓又は腹膜灌流を同一の日に実施した場合には,主たるものの所定点数のみによって算定することとなります。
[加算項目]
持続緩徐式血液濾過においては,夜間持続緩徐式血液濾過加算,障害者等加算といった加算項目があります。
(a) 夜間持続緩徐式血液濾過加算
入院中以外の患者に対する持続緩徐式血液濾過のうち,以下のいずれかに当てはまる場合には,所定点数に300点が加算されます。
- 午後5時以降に開始した場合
- 午後9時以降に終了した場合
- 休日に行った場合
(b) 障害者等加算
著しく持続緩徐式血液濾過が困難な障害者等に対して行った場合には,1日につき120点が加算されます。
・連続携行式腹膜灌流
連続携行式腹膜灌流(=連続携行式腹膜透析(CAPD))の診療報酬は1日につき330点ですが,導入期に限り1日につき500点を加算できます。「導入期」というのは,継続して連続携行式腹膜灌流を実施する必要があると判断された患者が連続携行式腹膜灌流を開始した日を起算点とする14日間をいいます。したがって,単に以前行っていた連続携行式腹膜灌流を再開したに過ぎない場合は,導入期加算をすることはできません。
また,在宅自己腹膜灌流指導管理料を算定している患者に対して連続携行式腹膜灌流を行った場合には,週1回を限度として算定できます。たとえば,在宅自己腹膜灌流指導管理料を算定している患者に対して週2回の連続携行式腹膜灌流を行った場合には,1回の診療報酬しか算定できませんが,薬剤費は別途算定できることになります。
・その他の腹膜灌流
その他の腹膜灌流の診療報酬は1日につき1,100点です。その他の腹膜灌流には,APD(Automated Peritoneal Dialysis:自動腹膜透析)が含まれることになります。
自宅で腹膜透析を行っている患者に対して,在宅自己連続携行式腹膜灌流に関する指導を行った場合,3,800点を算定できます。この指導を同一の月に複数回行う必要がある場合(在宅自己腹膜灌流の導入期にある場合や,糖尿病で血糖コントロールが困難である場合など)には,2回目以降の指導管理料は1回について2,000点,これを月2回に限って算定することができます。
もっとも,同一の月に複数回の指導を行っても,その月内に人工腎臓又は連続携行式腹膜灌流を算定する場合には,2回目以降の指導に要した費用は算定することはできません。
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海外ほど腎移植が一般的ではない日本においては(※),慢性腎不全となってしまった場合の治療方法としては透析療法(血液透析又は腹膜透析)を行うのが一般的ですが,その医療費は,全額自己負担の場合には,月に数十万円もの費用が必要になるといわれています。保険適用により3割負担に抑えられるといっても,月額10万円前後の費用がかかることになってしまいます。これでは,透析治療が必要な患者さんであっても,お金がないから透析を受けられない,といったことになりかねません。(実際,透析療法が一般的ではなかった時代には保険適用もなく,患者が高額の治療費を支払っていたこともありました。)このため,現在では患者の医療費負担を軽減する制度が整備されています。
(※ 2009年の我が国における腎移植数:1,302件 / 米国:年間15,000件 [出典:2010年版 腎不全の治療選択(日本腎臓学会・日本透析医学会・日本移植学会・日本臨床腎移植学会 編)])
・特定疾病療養受療証(健康保険)
一般に,医療費が高額になった場合には,「高額療養費制度(※)」を利用することで,自己負担限度額を抑えることができます(70歳未満の場合:「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」)。ただ,人工透析は,腎移植をしない限り生涯にわたって治療を継続しなければならないため,「高額療養費制度」を利用しても,治療費は高額にならざるを得ません。
そこで,慢性腎不全の透析治療については,「高額療養費制度」の利用に加え,「特定疾病療養受療証」の交付を受け,これを提示することによって,一医療機関あたりの一ヶ月の自己負担限度額を10,000円に抑えることができます。(標準報酬月額53万円以上の70歳未満の方は,一ヶ月の自己負担限度額は20,000円となります。)
・障害者医療費助成制度
上述のとおり,慢性腎不全の透析患者であれば,特定疾病療養受療証の交付を受け,これを提示することにより一医療機関あたりの一ヶ月の自己負担限度額を10,000円に抑えることができますが,さらに,この自己負担限度額を国・地方自治体が助成してくれる制度があります。それが「障害者医療費助成制度」です。
人工透析を受けている患者さんは,ほとんどの場合,身体障害者福祉法に基づく身体障害者等級のうち,腎臓機能障害1級に認定されます。これは,人工透析を受けている場合には,通常,「腎臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される」という身体障害者等級1級の要件に該当するためです。腎臓機能障害1級に認定されると身体障害者手帳を取得することができますので,これにより障害者医療費助成制度(名称は都道府県により多少異なります。(例:東京都の場合は「難病医療費等助成制度」。))を利用することができるようになります。本制度による助成額は各地方自治体で異なるものの,自己負担分(10,000円)の全額を助成する自治体が多いようです。
・まとめ
以上のように,透析患者のうち慢性腎不全の方は,特定疾病療養受療証の提示と障害者医療助成制度の2つを利用することで,月額0~10,000円の負担で透析を受け続けることができることになります。
※ 高額療養費制度(公的医療保険における制度の一つ)
患者の医療負担額が高額になった場合,その負担を軽減するための制度で,その内容は,歴月一ヶ月にかかった医療費の自己負担額が基準額を超えた場合にその超過分を後日支給するというものです。
「歴月」という要件が加わっているのは,高額療養費の計算が,歴月単位で医療費を請求するレセプト(医療機関が,支払機関や国保連合会に提出する診療報酬請求明細書のこと)を基準に行われているためです。このため,高額療養費の計算も歴月単位となっているのです。したがって,月をまたいで治療した場合には,その医療費の合算はできないことになります。
なお,同じ月であれば,同一の医療機関における自己負担額では上限額を超えない場合でも,複数の医療機関における自己負担額を合算すれば上限額を超えるときには,高額療養費の支給対象となります。
例:Xさん(所得区分「一般」)の2011年10月の医療費が,A病院では22万円,B病院では24.7万円であった場合
まず, Xさんが窓口で支払った金額について検討すると,A病院では66,000円,B病院では74,100円となり,合計140,100円(3割負担)となります。
次に,Xさんの所得区分は「一般」ですから,その自己負担限度額は「80,100+(総医療費-267,000)×1%」で算定されることになります。本例では,Xさんの負担上限額は,「80,100+(467,000-267,000)×1%」=82,100円となります。
最後に,高額療養費として支給される額は,「窓口で支払った金額-自己負担限度額」ですから,本例では「140,100-82,100円」=58,000円が高額療養費として支給される金額ということになります。なお,高額療養費の支給までには受診月から3ヶ月程度かかるようです。
(参考:「厚生労働省ホームページ 高額療養費制度を利用される皆さまへ」)
○ 参考資料
【透析の診療報酬】
・診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)(平成22年厚生労働省告示第69号)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-019.pdf
・診療報酬の算定方法の一部改正の伴う実施上の留意事項について(通知)(平成22年厚生労働省告示第69号)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-029.pdf
・e-医科点数表2010
http://recenavi.web.fc2.com/2010/J/J038.html
http://recenavi.web.fc2.com/2010/J/J038-2.html
http://recenavi.web.fc2.com/2010/J/J042.html
http://recenavi.web.fc2.com/2010/C/C102.html
【透析の医療費】
・2010年版 腎不全の治療選択(日本腎臓学会・日本透析医学会・日本移植学会・日本臨床腎移植学会 編)
http://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/sentaku_book.pdf
・高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省ホームページ)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf
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